平成30年度第2回海洋化学奨励賞
平成30年度第2回海洋化学奨励賞は,平成30年4月28日(土)京都大学楽友会館にて,以下の各氏に授与されました.
田副博文氏(U40)
所属・職:弘前大学被ばく医療総合研究所・助教
略歴:
2005年6月 東京大学理学系研究科化学専攻博士課程修了,博士(理学)
2006年7月 東京大学海洋研究所RR2001研究員
2006年8月 東京大学海洋研究所深海研究プロジェクト教務補佐員
2007年4月 日本大学文理学部化学科助手
2011年4月 弘前大学被ばく医療総合研究所助教
受賞題目:キレート樹脂固相抽出法を用いた海水中の難分析放射性核種ストロンチウム-90の新規分析法の開発
推薦理由:田副博文氏は,大学院在籍時から海水中の微量元素の濃度および同位体比の分析を続けてきており,世界的にも優れた分析技術を有する.近年,これまでの研究を活かして,ストロンチウム-90の迅速分析法を確立した.本法は海水のみならず土壌や生物試料へも適用可能であり,環境モニタリングにきわめて有用である.
金泰辰(キム テジン)氏(U40)
所属・職:韓国国立ソウル大学校海洋研究所・研究員
略歴:
2009年2月 韓国国立忠南大学校海洋環境科学科卒業
2011年9月 東京大学理学系研究科化学専攻修士課程修了
2015年3月 東京大学理学系研究科化学専攻博士課程修了
2015年4月 東京大学大気海洋研究所特任研究員
2018年4月 韓国国立ソウル大学校海洋研究所研究員
受賞題目:クリーンサンプリング法および高感度分析法を用いた海洋における亜鉛の分布と存在状態に関する研究
推薦理由:金泰辰氏は,海洋における亜鉛の分布と存在状態を解明する研究に従事した.亜鉛はきわめて汚染の影響を受けやすいが,ピコモルレベルの分析法を確立し,採水時の汚染の問題を解決した.インド洋における亜鉛の化学形態を世界で初めて明らかにし,北太平洋亜寒帯における亜鉛の東西断面分布を明らかにした.
鄭臨潔(テイ リンケツ)氏(U30)
所属・職:京都大学化学研究所・研究員
略歴:
2011年7月 中国延辺大学理学部応用化学学科卒業
2015年3月 京都大学大学院理学研究科化学専攻修士課程修了
2018年3月 京都大学大学院理学研究科化学専攻博士後期課程修了,博士(理学)
2018年4月 京都大学化学研究所研究員
受賞題目:海水中生物活性微量金属9元素の一括定量法の開発と北太平洋への応用
推薦理由:鄭臨潔氏は,一つの海水試料中の微量金属9元素(Al, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Cd, Pb)を同時に自動で濃縮分離できる方法を開発した.本法は従来法に比べて高精度,低ブランクであり,作業者の負担を軽減し,研究効率を大きく改善した.この方法を用いて北太平洋における微量金属の分布を包括的かつ系統的に研究してきている.
望月陽人氏(U30)
所属・職:日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センター・研究員
略歴:
2011年3月 京都大学総合人間学部総合人間学科卒業
2013年3月 京都大学大学院人間・環境学研究科相関環境学専攻修士課程修了
2016年3月 京都大学大学院人間・環境学研究科相関環境学専攻博士後期課程修了,博士(人間・環境学)
2016年4月 日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センター研究員
受賞題目:陸水域におけるウランおよびオキシアニオンの地球化学的研究
推薦理由:望月陽人氏は,微量元素のウランやオキシアニオンの陸水域における地球化学に関する研究を精力的に行ってきた.琵琶湖,バイカル湖,塩湖,沖縄河川,エニセイ川などの陸水学パラメータが大きく異なる湖沼と河川において,各水域の特徴と微量元素の分布・動態との関係性を調べ,特にpHと炭酸化学種に支配される水相−固相分配の影響を明らかにした.