令和5年度第7回海洋化学奨励賞
令和5年度第7回海洋化学奨励賞は,令和5年4月22日(土)京都大学楽友会館にて,以下の各氏に授与されました.
遠藤 寿氏(U40)
所属・職:京都大学化学研究所附属バイオインフォマティクスセンター化学生命科学研究領域・准教授
略歴:
2008年3月 東京学芸大学教育学部環境教育課程自然環境科学専攻卒業
2010年3月 北海道大学大学院環境科学院環境起学専攻修士課程修了
2013年3月 北海道大学大学院環境科学院環境起学専攻博士後期課程修了
2013年4月 北海道大学大学院地球環境科学研究院博士研究員
2017年5月 京都大学化学研究所附属バイオインフォマティクスセンター助教
2022年11月 京都大学化学研究所附属バイオインフォマティクスセンター准教授,現在に至る
受賞題目:分子生物学手法を用いた海洋生物地球化学循環の研究
推薦理由:遠藤氏は,海水中に存在する核酸分子を定量的かつ網羅的に分析する手法に精通し,同手法を用いて植物プランクトンやウイルスの全球分布を世界に先駆けて明らかにした.分子生物学手法と既存の分析化学手法との比較に注力し,核酸を指標とした定量結果が生物量や光合成機能の定量結果と高い整合性を持つことを示した.さらに,分子生物学手法が海水中のCO2や鉄などの環境因子に対する微生物応答の検出にも有効であることを示した.
山崎 敦子氏(U40)
所属・職:名古屋大学大学院環境学研究科大気水圏科学系・講師
略歴:
2010年4月 日本学術振興会特別研究員DC1(北海道大学大学院理学研究院)
2013年3月 北海道大学大学院理学院自然史科学専攻博士後期課程修了,博士(理学)取得
2013年4月 日本学術振興会特別研究員PD(東京大学大気海洋研究所)
2016年4月 北海道大学大学院理学研究院地球惑星科学部門博士研究員
2016年7月 北海道大学大学院理学研究院地球惑星科学部門特任助教
2018年4月 九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門助教
2022年10月 名古屋大学大学院環境学研究科大気水圏科学系講師,現在に至る
受賞題目:サンゴ骨格を用いた低緯度域の表層海洋における栄養塩指標の開発
推薦理由:山崎氏は,貧栄養海域に分布する造礁サンゴ骨格の地球化学指標を用いて,過去の栄養塩の流入過程とその季節変化と経年変動を明らかにした.特に造礁サンゴ骨格中の微量有機物の窒素同位体比を分析する手法と指標のキャリブレーションを確立し,窒素循環の推定に応用した.また,サンゴの飼育実験を通して,造礁サンゴ骨格の微量金属元素を用いた栄養塩指標の高精度化にも取り組んできた.
田中 えりか氏(U30)
所属・職:高知大学海洋コア総合研究センター・助教
略歴:
2016年3月 東京大学工学部システム創成学科卒業
2018年3月 東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻修士課程修了
2018年4月 東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻博士課程進学/日本学術振興会特別研究員 (DC1)
2021年3月 同修了
2021年4月 日本学術振興会特別研究員 (PD)/千葉工業大学 招聘研究員
2023年1月 高知大学海洋コア総合研究センター助教,現在に至る
受賞題目:海底堆積物に記録された堆積環境の復元と海底鉱物資源の形成メカニズムの一体的研究
推薦理由:田中氏は,海底資源として注目されるレアアース泥の研究を展開してきた.海洋底コア試料を用いて堆積物の構成成分や化学組成を詳細に分析し,レアアース泥形成過程を明らかにした.元素濃度分析に加え,Sr, Nd, Os等の同位体から得られる情報も組み込み,より高度なモデルを構築した.また,レアアース泥濃集相に狭在する炭酸塩堆積物は,レアアース泥そのものは保持していない年代や堆積環境の情報を読み取るカギとなることを見出した.