令和6年度第8回海洋化学奨励賞
令和6年度第8回海洋化学奨励賞は,令和6年4月27日(土)京都大学百周年時計台記念館にて,以下の各氏に授与されました.
眞塩麻彩実氏(U40)
所属・職:金沢大学理工研究域物質化学系・准教授
略歴:
2010年3月 名古屋大学理学部地球惑星科学科卒業
2012年3月 東京大学大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻博士前期課程修了
2015年3月 東京大学大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻博士後期課程修了
2015年4月 東京大学大気海洋研究所学術支援職員
2016年7月 静岡県立大学食品栄養科学部環境生命科学科助教
2017年11月 金沢大学理工研究域物質化学系助教
2023年11月 金沢大学理工研究域物質化学系准教授,現在に至る
受賞題目:水圏環境における白金族元素の分布と動態に関する研究
推薦理由:眞塩氏は陰イオン交換樹脂カラムを用いた固相抽出とICP質量分析を組み合わせた同位体希釈分析法により,数百fMレベルの白金やパラジウムの測定を可能にした.この分析法を活用して,太平洋,日本海などの縁辺海,および日本沿岸での白金とパラジウムの挙動を明らかにした.また,沿岸堆積物の分析結果をもとに,沿岸における白金の供給源は海底堆積物であり,海底に堆積した陸起源物質に含まれる白金が徐々に溶存態に移行し,底層水に放出されるメカニズムを明らかにした.
植木隆太氏(U30)
所属・職:福岡県保健環境研究所・研究職
略歴:
2018年3月 広島大学総合科学部総合科学学科卒業
2020年3月 広島大学大学院生物圏科学研究科環境循環系制御学専攻修士課程修了
2020年4月 三浦工業株式会社入社
2020年6月 同退職
2020年10月 京都大学化学研究所研究生
2021年4月 京都大学大学院理学研究科化学専攻博士後期課程編入学
2024年3月 同修了
2024年4月 福岡県保健環境研究所・研究職,現在に至る
受賞題目:亜寒帯北太平洋とインド洋におけるZr, Nb, Hf, Taの海洋地球化学
推薦理由:植木氏は,海水中Zr, Nb, Hf, Taの分析法を再検討し,高精度で簡便な分析法を確立した.この分析法を用いて,Zr, Nb, Hf, Taの溶存態と全可溶態の亜寒帯北太平洋東西断面分布とインド洋南北断面分布を初めて報告した.特にインド洋において,ZrとHfが花崗岩質大陸起源物質の影響を強く受けていることを明らかにした.その結果,海水中のZr/Hf比は大西洋からインド洋,太平洋へと系統的に変化し,全球規模の海洋循環のトレーサーとして有用であることを示した.